2013年3月22日金曜日

アルケ・スナン王立製塩所は理想都市計画の跡


アルケ・スナン王立製塩所Saline Royale d'Arc-et-Senans はブザンソンの南西約35kmのところにあります。
製塩所入口です。
これが本当に製塩所の入口なのか、と少し戸惑うほど立派なものです。

ここに着いたときは、ちょうど昼休みで閉まっていて、14時に開くとのことでした。
車で周囲をうろうろして探したのですが、駅の近辺を含めて適当な食事場所が見つかりません。



しかたなく、製塩所の真ん前にあるカフェ・レストランで食事をしようと入ったら、もう昼の食事は終わりと言われてしまいました。
最初からこの店に入っていればセーフだったのに、他をさがしたのがまずかったです。
で、仕方なくビールだけ頼んで、手持ちの天津甘栗と黒豆やガレットを出してきてお昼にしました。
中にある大きな建物は作業所です。
フラッシュ・コンテ地方には地下に岩塩の鉱脈があり、昔から井戸を掘り塩水を煮詰めて製塩していました。
しかし、塩水を煮詰めるための燃料として近隣の森林伐採が進んだため木材資源が乏しくなってしまったのです。
そこで、違う方式で塩を作る新しい製塩所の建築が必要になったのでした。


製塩所のデザインは、元・製塩所の監視官クロード・ニコラ・ルドゥに依頼されました。
1774年ルイ15世に提出された最初のルドゥの計画は、それは壮大なもので、製塩所だけではなく、その近くに所員などが生活するのに必要な機能を幾何学的に配置し、それらをまとめて高い塀で囲んだもので、守衛室から礼拝堂、パン屋などまでが備わった理想的な都市計画とも言えるものでした。



現在残っている建物が当初のデザインを反映しているのかは不明ですが、これらの建物に見られるドーリア式円柱から、それは製塩所としては異常に立派なものだったことは確かです。

左の正面に柱が立っている建物は所長の家です。
当時、塩は肉や魚を保存するために、たいへん貴重なものでした。塩は多くの収入をもたらすものでしたので、それを狙う泥棒もいたのです。

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だから、周囲に高い塀をめぐらせて、その中で生活が完結するように設計したのでしょう。
いずれにしても、計画は資金難などにより途中で頓挫し変更されました。1779年に製塩所が稼動し始めてからも、塩の生産効率は予想を遥かに下回るものだったとのことでした。
1895年に閉鎖された後、1940年には史跡と指定され、1982年には世界遺産となりました。



売店には、世界各国の塩が展示販売されていました。
当時から既に、地下の岩塩鉱脈からの塩はコスト的に安い海水からの塩に押され気味だったということです。
創造的であるなどの理由から世界遺産となったこの製塩所ですが、製塩のための機能よりも理想的な都市づくりが先にあったために失敗したということなのでしょう。
(2012年5月)