2013年3月29日金曜日

ロンシャン礼拝堂は巨匠ル・コルビュジエが設計

ブザンソンから北東方向へ約100km走ったあたりにロンシャンRonchampの村があります。
ここに来た目的は、世界三大建築家の一人と言われるル・コルビュジエが設計したロンシャン礼拝堂 Chapelle Notre-Dame du Haut を見ることです。

ロンシャンの村に入って少し走ると、村外れの丘の上に小さな白い建物が見えています。
着いたのがお昼過ぎだったので、開いているのか心配でした。
インターフォンがあるゲートが閉まっているので、ブザーを何度も押したのですが、返答がありません。

しばらくするうちに気づいたのですが、後から来た人たちは、別の方へ歩いて行きます。
見ると、天井が芝で被われた受け付けの建物があるではありませんか。

駐車場からも見えていたこの建物ですが、角度的に礼拝堂の方向ではありませんでした。
礼拝堂だけに目が向いていたため、周囲は全く目に入らなかったというわけです。
この建物は、景観を壊さないように、ということなのでしょう。半分地中に埋まっているように建てられていました。

礼拝堂は昼休みもなくちゃんと開いています。
入場料は一人8ユーロです。
 ゆるやかな坂を上がっていくところで、礼拝堂がだんだん姿を現してきます。
ル・コルビュジエが63歳のとき(1950年)に設計した晩年の作品です。
尖った屋根は 船の舳先を思わせる形をしています。
この礼拝堂は鉄筋コンクリート造りなのですが、何とも優しく暖かい雰囲気がある建物になっています。
「重い壁を軽く見せ、軽い屋根を重く見せる」というル・コルビュジエの建築技法の具現例と言われているのがよく分かります。

右手の壁にある小さく見える窓が祭壇の後ろの窓になります。
左手の壁にある、大小の窓は採光のためのもので、ステンドグラスがはめ込んであります。
その左のタワーとの間の薄茶色の部分に入口のがあります。
入口ドアの原色抽象画は、まるで子どもが描いたもののようにも見えましたが、ル・コルビュジエ本人によるものだそうです。
 「船の舳先」の部分を下から撮りました。
実際には船ではなく、屋根はどこかの海岸で見た「カニの甲羅をイメージした」ものだということです。

 後ろに廻ったところです。
大小3つあるタワーは明かり取りの役割を果たしています。
このタワーからの光が礼拝堂の内部を柔らかく照らして荘厳な雰囲気を作っていました。
上の写真にもある祭壇の外側の壁です。
ここにも説教壇があり、特別な祝祭日などには1200人もの人々が集まることができるようになっています。
内部に入ったところです。
右手の壁に外から見えていた四角い窓がたくさんありますが、この部分の壁の厚さはふつうではありません。3mぐらいはあるのではないでしょうか。
壁の最上部には柱が立てられて屋根との間にスリットがあるのが、そこから光が入ってきていることから分かります。
それぞれ形や大きさが違う窓から入る光は、厚い壁を通ってくることもあってか、幻想的でやさしい雰囲気を与えてくれています。

木製のベンチも、ル・コルビュジエの設計に依るものだそうです。
祭壇です。
ここはカトリック・ドミニコ会派の礼拝堂だそうですが、それにしても簡素です。
偶像が見あたりませんでしたが、後ろの壁の窓のガラスにマリア像が嵌め込まれているとのことです。

正面ファサードの手前にあったものは祭壇?でしょうか。
若い男女2人がその上で語らいあっていました。
 礼拝堂の後ろにあった大中小の鐘です。
これも後部に突き出た雨樋です。
ブタの鼻のような、面白い形をしています。
両サイドがせり上がっている屋根に落ちた雨は、屋根の真ん中に集まってここから流れ落ちていくのです。
豪雨のときに、ここから流れ落ちる雨水を見てみたいと思いました。
礼拝堂がある丘の上から、ロンシャンの村を見下ろしたところです。
秋の紅葉の頃の写真があったので、それを撮りました。
鉄筋コンクリートの塊も、ル・コルビュジエという巨匠にかかると、周囲の自然の中にこれほど溶けこんでしまうのです。
(2012年5月)




2013年3月23日土曜日

ブザンソン ヴォーバン設計の城砦がある町


ブザンソンbesançonは東側をスイス国境に接するドゥー県Doubsの首都で、蛇行するドゥー川によりリング(環)状になったところにあります。

この町は、隔年でクラシックの国際音楽祭が開催されることで有名で、その昔に指揮者コンクールで小澤征爾が優勝したことでも知られています。



町の周囲を流れる川が濠のように町を守り、首のように細い陸続きの部分にも小高い丘があって外敵の侵入を防ぎやすいことから、この町は昔から軍事的な拠点として、また政治的、宗教的にも中心的な役割を果たしてきたということです。

町の南東部に聳える城砦に行く途中にある、サン・ジャン大聖堂です。
外壁が修復工事中で、かなりの部分が養生で被われていました。

 その手前にあるノワール門です。
ここも修復中でした。




ノワール門のそのまた手前左側にある小さな公園のような場所には、入口の門だったのでしょうか、古い柱列が残っています。
ここは、昔のローマ小劇場跡だそうです。











公園の中では、子どもたちが遊んでいました。
真ん中にある石造りの遺跡に、劇場があった頃の配置図があります。








城砦の入口あたりです。
外敵の侵入を防ぐための濠があります。












もともとブザンソンへ陸から入る唯一のルートである町の南東部の丘部分(首のように細いところ)にこの城砦が作られたのですから、特に城砦が出来てから町の守りは実に堅固だったことでしょう。

ヴォーバンはルイ14世に仕えた、17世紀に活躍したフランスの技術将校です。軍人であると同時に、建築家、都市計画家でもありました。
生涯で、新たに基礎から築いた要塞が37か所、改修に携わった要塞が300か所、攻略した要塞が53か所あったそうです。
ヴォーバン式要塞は稜堡式城郭の完成形とも言えるものだそうです。それまでの要塞と比較しても独創的なものはないものの、それらを体系化したところに大きな功績があると評価されています。

また、近代的な稜堡式の要塞の築城法を体系化し、「落ちない城はない」と言われたほどの要塞攻城の名手だったと言われています。
ヴォーバンの要塞は堅固で、攻略されないため様々な工夫が施されているのが特長です。

でも、スペイン継承戦争のとき、自ら築城した要塞が攻略されてしまうということもあり、どちらかというと防御よりも攻撃が得意な人だったのかも知れません。














城壁の一部は、その内側を歩くことができるようになっています。
壁の外をのぞき込んでは「ウァー!!すごく高いね!」と感心してしまいました。











城砦は小高い丘の上にあり、上からの眺めを楽しむことができます。












川が蛇行している様子も見ることができます。




この城砦内には水族館があり、錦鯉が飼われています。












動物園には、オーストラリアから連れて来たワラビーがいました。
尻尾にシマ模様があって、タスマニアのものとは種類が違いますが、異郷で偶然知人に出くわしたような、なつかしい気持になりました。











ワラビーの赤ん坊がどういう状態でいるかを説明しているパネルです。
写真で見ると、まるで赤いアリのようで、哺乳動物には見えませんが、ちゃんとおっぱいをくわえています。こういう状態で数ヶ月間育って初めて私たちが知っているワラビーの赤ちゃんの姿になっていくのです。








城砦内にあるヴォーバンの像。
設計図を見ているところでしょうか。足元にコンパスやら定規やらがころがっています。














濠の中に猿(たぶんマントヒヒ)が何匹か飼われています。

2匹がのんびりとお互いに蚤をとってやっていましたが、猿も登れないほどの急な濠の壁だということが分かります。




帰りに小学生の団体に出くわしました。これから城砦内で校外学習するところのようです。
城砦のことだけではなく、水族館や動物園もあるので、学習できることがたくさんありそうですね。
(2012年5月)



























2013年3月22日金曜日

アルケ・スナン王立製塩所は理想都市計画の跡


アルケ・スナン王立製塩所Saline Royale d'Arc-et-Senans はブザンソンの南西約35kmのところにあります。
製塩所入口です。
これが本当に製塩所の入口なのか、と少し戸惑うほど立派なものです。

ここに着いたときは、ちょうど昼休みで閉まっていて、14時に開くとのことでした。
車で周囲をうろうろして探したのですが、駅の近辺を含めて適当な食事場所が見つかりません。



しかたなく、製塩所の真ん前にあるカフェ・レストランで食事をしようと入ったら、もう昼の食事は終わりと言われてしまいました。
最初からこの店に入っていればセーフだったのに、他をさがしたのがまずかったです。
で、仕方なくビールだけ頼んで、手持ちの天津甘栗と黒豆やガレットを出してきてお昼にしました。
中にある大きな建物は作業所です。
フラッシュ・コンテ地方には地下に岩塩の鉱脈があり、昔から井戸を掘り塩水を煮詰めて製塩していました。
しかし、塩水を煮詰めるための燃料として近隣の森林伐採が進んだため木材資源が乏しくなってしまったのです。
そこで、違う方式で塩を作る新しい製塩所の建築が必要になったのでした。


製塩所のデザインは、元・製塩所の監視官クロード・ニコラ・ルドゥに依頼されました。
1774年ルイ15世に提出された最初のルドゥの計画は、それは壮大なもので、製塩所だけではなく、その近くに所員などが生活するのに必要な機能を幾何学的に配置し、それらをまとめて高い塀で囲んだもので、守衛室から礼拝堂、パン屋などまでが備わった理想的な都市計画とも言えるものでした。



現在残っている建物が当初のデザインを反映しているのかは不明ですが、これらの建物に見られるドーリア式円柱から、それは製塩所としては異常に立派なものだったことは確かです。

左の正面に柱が立っている建物は所長の家です。
当時、塩は肉や魚を保存するために、たいへん貴重なものでした。塩は多くの収入をもたらすものでしたので、それを狙う泥棒もいたのです。

海外旅行世界遺産 アルケ-スナンの王立製塩所の画像 アルケ-スナンの王立製塩所の絶景写真画像ランキング  フランス
だから、周囲に高い塀をめぐらせて、その中で生活が完結するように設計したのでしょう。
いずれにしても、計画は資金難などにより途中で頓挫し変更されました。1779年に製塩所が稼動し始めてからも、塩の生産効率は予想を遥かに下回るものだったとのことでした。
1895年に閉鎖された後、1940年には史跡と指定され、1982年には世界遺産となりました。



売店には、世界各国の塩が展示販売されていました。
当時から既に、地下の岩塩鉱脈からの塩はコスト的に安い海水からの塩に押され気味だったということです。
創造的であるなどの理由から世界遺産となったこの製塩所ですが、製塩のための機能よりも理想的な都市づくりが先にあったために失敗したということなのでしょう。
(2012年5月)

2013年3月14日木曜日

アルボア ジュラワインの中心にある町

アルボアArboisはブザンソンの南南西50kmほどのところにある町です。

スイスとの国境に沿って走るジュラ山脈の西に位置するフラッシュ・コンテ地方ジュラ県。
その中にあるアルボア周辺のぶどう畑はAOCに指定されています。






栽培されているぶどうの多くは白のサヴァニャン種ですが、その造り方に特長がある「黄色いワインvin jaune」がこの地方でできるジュラ・ワインの中でも最も有名です。

まずは、町にあるジュラワイン博物館へ行きました。
お城のような立派な建物です。





博物館の周囲に、この地方で栽培されているぶどうの品種を見ることができます。

白が多いけど、ピノ・ノワールがあります。



こちらも赤のプールサールPoulsardです。 
博物館内のディスプレイ。
ぶどう絞り器でしょうが、ずいぶん小さなものです。

面白い形をしたものがありました。
木屑を固めたようなものです。
下に紐がついているので、ぶら下げるのでしょう。 
この写真を見ると、盛装した人々がこの木屑のかたまりのようなものを持ってパレードしています。
形からして杉玉のようですが、おそらく同じような用途で使われたのではないでしょうか。
館内の人に聞こうと思ったのですが、フランス語だけなので分かりませんでした。



町の中心へ下りていきました。
あちこちにワインショップが軒を連ねているというと大げさに聞こえますが、とにかくワイン屋さんが多いところです。

ここのバーの壁には、ぶどうの葉を模した装飾が施されていました。


だいたいの店では、試飲ができるようです。 
看板にDegustationの表示が見られます。
この店では、もう既にワインが取っ手付紙箱に入っていて、即座にお持ち帰りができるようになっています。











ジュラワインの特徴は、写真にあるずんぐりとしたボトルにあります。
シェリー酒のボトルのような形ですが、黄色いワインVin Jauneは実際にシェリーのような造り方をするそうです。
また、内容量は通常のボトルが750mlなのに対して620mlと少なくなっています。








ギフト用、お運び用に箱詰めされたジュラワインがウインドウに並んでいます。





試飲をするのに入ったお店です。
大きな酒樽を輪切りにしたような入口が2つあります。



HENRI MAIREというお店で、1632年創業ということでしょうか。ずいぶんな老舗です。

この店にはバーがあり、試飲はテーブルに座ってということでした。








左が黄色いワインで、右はプールサールから造ったロゼです。
ボトルの形も違いますが、グラスもブランデー用のような形のものを使っています。
「おつまみ」として、サラミとチーズが出てきました。この地で有名なコンテ・チーズだったかも知れませんが、聞くのを忘れました。

黄色いワインはオーク樽で6年以上も寝かせて造るそうです。14-17℃ぐらいに少し冷やして飲むと美味しいとのこと。

ロゼは味が薄いものが多い中で、このプールサールのものは軽くてフレッシュだけどしっかりした味で好感が持てました。

後で出てきた、ジュラ・マクヴァンJura Macvinは、甘口のデザートワイン風のもの。グラスもそれ用に替えてくれました。
これは、発酵前のワインとマールを混ぜたものだそうで、アルコール度は16%とちょっと高めです。6-8℃に冷やしてあり、キリっとして爽やかでした。この店のおじさんのお薦めもあり、これを買うことにしました。
17.5ユーロです。
アルボアの町中にある教会のタワーです。
この教会の向かい側にインフォメーションがありました。
アルボアのぶどう畑です。
丘がちの地形ですので、ぶどう畑の規模もさほど大きなところは無さそうでした。




アルボアの町はずれのPupillin地区には、14-5軒のワイナリーがあるようです。
ブザンソンの宿のご主人が薦めてくれたワイナリーがこの地区にあるというので行ってみました。









見つけたワイナリーの看板は、 発泡酒のボトルでした。
ジュラ県では、シャンペンスタイルのクレマンを造っていると、どっかに書いてありましたが、ここがそうなのでしょう。
残念ながら、昼休み休憩中で中へは入れませんでした。
(2012年5月)